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垣内 拓大*; 的場 友希*; 小山 大輔*; 山本 優貴*; 吉越 章隆
Langmuir, 38(8), p.2642 - 2650, 2022/03
被引用回数:1 パーセンタイル:14.86(Chemistry, Multidisciplinary)Hf薄膜を形成したSi(111)基板の界面および表面の酸化プロセスを超音速酸素分子ビーム(SOMB)と放射光光電子分光法により研究した。酸化は最表面のHf層から始まり、化学量論的なHfOを生成する。2.2eVのSOMBを照射した場合、界面のHfシリサイドが酸化され、HfO/Si界面近傍にHf-O-Siが生成した。Si基板で酸化が起こり、SiO化合物が生成される。HfO層の下にあるSiO/Si界面領域からSi原子が放出され、歪んだSi層に発生した応力を解放する。放出されたSi原子は、HfOを通過して入射するOガスと反応する。
垣内 拓大*; 的場 友希*; 小山 大輔*; 山本 優貴*; 加藤 大暉*; 吉越 章隆
Surface Science, 701, p.121691_1 - 121691_8, 2020/11
被引用回数:1 パーセンタイル:6.04(Chemistry, Physical)放射光XPSを用いて清浄Si(111)-77表面上に堆積したHf超薄膜の界面および表面の化学状態を調べた。極薄Hf層の成長は、相図のてこ則に従う。Hf/Si(111)には、3つの成分(金属Hf層, Hfモノシリサイド(HfSi)およびSiリッチHfシリサイド)があった。極薄Hf層は、1073Kのアニーリング後、HfSiアイランドに変化し、長方形形状のアイランドの長軸がSi(111)DASモデルのコーナーホール方向になることが分かった。
垣内 拓大*; 山崎 英輝*; 塚田 千恵*; 吉越 章隆
Surface Science, 693, p.121551_1 - 121551_8, 2020/03
被引用回数:3 パーセンタイル:19.68(Chemistry, Physical)光電子分光法を用いてSi(100)-21表面上のハフニウム(Hf)超薄膜の酸化を調べた。金属Hfは急速に酸化され二酸化ハフニウム(HfO)とその亜酸化物に変化した。界面のHfSi成分は、Oとほとんど反応しなかった。これらの事実は、Hf/Si(100)薄膜の初期酸化において金属Hfの存在が重要であることを示唆している。873Kから973Kにアニールした後、低価数のHf亜酸化物は完全に酸化されてHfOになった。アニール温度が約1073Kに達すると界面のSiOと極薄HfOから酸素が完全に除去された。そして、極薄HfO層が島状ハフニウムシリサイド(-HfSi)に変化し、Si(100)-21表面上に形成された。-HfSiは298KでOとわずかに反応した。Si(100)-21表面の初期酸化とは対照的に、-HfSiは優先的に酸化された。
山口 憲司; 鵜殿 治彦*
International Journal of Hydrogen Energy, 32(14), p.2726 - 2729, 2007/09
被引用回数:14 パーセンタイル:36.77(Chemistry, Physical)本研究では、FeSiを基とする材料により太陽光を電気エネルギーに変換し、これにより水を電気分解し水素製造を安価に行う新しい材料の研究開発活動を紹介する。この方法による水素製造は炭素を放出することなく、「環境」に対しても低負荷であると考えられる。本研究では、-FeSiなるシリサイド系の半導体材料に焦点を当て、太陽電池材料としての特性をSiと比較する。-FeSiは0.87eVのバンド幅を有する直接遷移型の半導体で、1eVで10cmという非常に大きな吸収係数を有するとされる。このため、素子の薄膜化が可能で大幅な資源的節約が図れる。本研究で紹介する-FeSiの製法はイオンビーム技術やナノ構造評価手法の発展的応用であり、これまでに100nm程度の高品位薄膜が開発されている。
山口 憲司; 志村 憲一郎; 鵜殿 治彦*; 笹瀬 雅人*; 山本 博之; 社本 真一; 北條 喜一
Thin Solid Films, 508(1-2), p.367 - 370, 2006/06
被引用回数:12 パーセンタイル:49.71(Materials Science, Multidisciplinary)成膜後の加熱処理が-FeSi薄膜からの発光(PL)特性に与える影響をより詳細に調べるために、作製した薄膜試料をさまざまなアニール条件で処理した。試料の作製はイオンビームスパッタ蒸着(IBSD)法もしくは分子線エピタキシー(MBE)法によった。いずれの製法でも、蒸着速度は0.5nm minとほぼ同程度で、膜厚は50-100nmであった。また、PL測定は1100-1700nmの波長範囲で行った。測定の結果、最も強いPL強度を示すのは、IBSD法で作製した試料を1153Kにて10Pa程度の真空中でアニールした場合であることがわかった。この場合、測定温度150K以下では、温度が増加してもPL強度はさほど減少しない。しかし、150K以上になると、温度の増加とともに急激に減少するとともに、ピーク位置も低エネルギー側へシフトすることがわかった。一方、超高真空(10Pa)下でアニールをした場合、アニールによりPL強度は著しく減少した。さらに、透過型電子顕微鏡による断面組織観察によって、高温での真空アニールによりシリサイド膜は数10nm程度の粒状となり、周囲をSiにより取り囲まれてしまうこともわかった。MBE法により成膜した鉄シリサイド膜についてもPL特性を調べたが、概して強度は弱く、また、アニールによる強度の増加もごくわずかであった。
志村 憲一郎; 山口 憲司; 笹瀬 雅人*; 山本 博之; 社本 真一; 北條 喜一
Vacuum, 80(7), p.719 - 722, 2006/05
被引用回数:9 パーセンタイル:34.33(Materials Science, Multidisciplinary)イオンビームスパッタ蒸着(IBSD)法により作製した-FeSi薄膜の発光特性に及ぼす、-FeSiの構造や表面組成の影響を調べた。本手法により、あらかじめNeイオンによりスパッタ洗浄したSi(100)表面上にFeを蒸着させることにより、973Kにて高配向性の-FeSi薄膜を作製した。用いた基板はSi(100)単結晶基板、及び、酸化物絶縁層上に100nm程度のSi(100)層を有するSIMOXと称する基板である。発光測定は、6-300Kの温度範囲で行った。いずれの基板上の-FeSiも6-50Kで0.83eV付近に鮮明な発光ピークを有し、その強度もほぼ同程度であった。しかし、Si(100)基板上に作製した-FeSi薄膜は、1153K,真空中(10Torr)でのアニールにより発光強度が劇的に増加したのに対し、SIMOX上で成膜した薄膜の発光強度は、アニールにより逆に減少した。いずれの薄膜もアニールにより大きくその構造が大きく変貌することが透過型電子顕微鏡による断面組織観察により明らかになった。さらに、X線光電子分光法による組成分析によると、SIMOX基板の場合にはシリサイド層直下の酸化物層から酸素が侵入することもわかった。こうした構造上、組成上の変化が観測された発光特性の変化と深く関係していると思われる。
志村 憲一郎; 山口 憲司; 山本 博之; 笹瀬 雅人*; 社本 真一; 北條 喜一
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B, 242(1-2), p.673 - 675, 2006/01
被引用回数:6 パーセンタイル:43.85(Instruments & Instrumentation)イオンビームスパッタ蒸着(IBSD)法により作製した-FeSi薄膜の発光特性を調べ、本手法による-FeSiとしては初めて、100K以下の温度にて0.77及び0.83eV付近に発光ピークを観測した。さらに1153Kで24時間以上アニールすることにより、ピーク位置は0.81eVへとシフトするものの、6Kでの発光強度は1桁以上増加した。アニール前の発光スペクトルは100K以上で消光してしまったのに対し、アニール後は、室温付近まで発光を観測することができた。
志村 憲一郎; 山口 憲司; 笹瀬 雅人*; 山本 博之; 社本 真一; 北條 喜一
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B, 242(1-2), p.676 - 678, 2006/01
被引用回数:0 パーセンタイル:0.01(Instruments & Instrumentation)絶縁性の酸化物層上に100nm程度のSi層を有するSIMOX基板を用い、イオンビームスパッタ蒸着法によるドライ・プロセスで-FeSi層を絶縁層上に作製することを試みた。しかし、Feターゲットを用いてSi層をシリサイド化させる過程で、直下の酸化層から酸素が拡散することがわかった。そこで、このシリサイド層をテンプレートとし、この上にFeSiターゲットを用いて蒸着を行うことで、酸素の混入がほとんどない厚膜のシリサイド層の作製が可能になった。
五十嵐 慎一*; 原口 雅晴*; 相原 純; 齋藤 健*; 山口 憲司; 山本 博之; 北條 喜一
Journal of Electron Microscopy, 53(3), p.223 - 228, 2004/08
被引用回数:4 パーセンタイル:24.19(Microscopy)固相反応に伴う鉄シリサイドの形成と相変化を、透過電子顕微鏡を用いた平面観察により検討した。実験では、超高真空中にて室温でFeをSi(100)基板上に蒸着させ、その後、試料を電子顕微鏡内にて673-1073Kの温度範囲で段階的に昇温した。673Kでの加熱により、まず多結晶質のFeSi細粒が観察された。さらに973Kへと昇温するに伴い、細粒同士が合体を始め数100nmサイズの多結晶-FeSiが形成されることがわかった。こうした相変化は同時に行った電子エネルギー損失スペクトルの測定によっても確認された。
山口 憲司; 部家 彰*; 志村 憲一郎; 勝俣 敏伸*; 山本 博之; 北條 喜一
Thin Solid Films, 461(1), p.17 - 21, 2004/08
被引用回数:4 パーセンタイル:25.12(Materials Science, Multidisciplinary)-FeSiは、Si基板へのエピタキシャル成長が可能で、新しい光エレクトロニクス用半導体への期待から大きな関心を集めている。その結晶構造は、合成時におけるFeとSiの原子比に大きく依存するため、本研究では、Fe,FeSi,FeSiといった種々の組成比を有するターゲット材料を用い、イオンビームスパッタ蒸着法によりSi(100)基板上への-FeSi薄膜の合成を試みた。実験結果によると、FeSiターゲットの場合、Siリッチな相である-FeSi (FeSi)が支配的であった。一方、Feターゲットの場合は、(100)面に配向した-FeSi相が873-973 Kで観測された。FeSiターゲットではSiはターゲットと基板の双方より供給されるため、必然的にSiリッチとなり相が維持できなくなると考えられた。しかし、一方で、Feターゲットの場合でも、膜厚が100nmになると多結晶質になることがわかった。これらの事実は-FeSiのエピタキシャル成長にとってFeとSiの原子比が重要であることを示していると考えられ、そこで中間的な組成を有するFeSiターゲットを採用したところ、120nm程度の高配向性の-FeSi膜を作製することができた。
山口 憲司; 原口 雅晴*; 勝俣 敏伸*; 志村 憲一郎; 山本 博之; 北條 喜一
Thin Solid Films, 461(1), p.13 - 16, 2004/08
被引用回数:10 パーセンタイル:46.84(Materials Science, Multidisciplinary)イオンビームスパッタ蒸着法により、773-973Kの温度範囲で、Si(100)基板上にFe蒸着膜厚8-30nmの-FeSi薄膜を作製した。X線回折による分析の結果、本研究の条件下では-FeSi相が支配的であることがわかった。薄膜の電気特性については、蒸着の前後で電気特性がほとんど変わらなかったことから、圧倒的に基板の電気伝導度が大きいと考えられた。最良の結晶特性を有する薄膜は、基板温度; 873K, Fe蒸着膜厚; 15nm、もしくは、温度; 973K, 膜厚; 30nmという条件下で得られた。これを換言すれば、前述の条件よりも高温もしくは低膜厚条件下では、金属相である-FeSi相が混在するようになる一方で、低温,高膜厚条件下では-FeSi相は多結晶質になった。これらの事実は、Si原子とFe原子による相互拡散、ならびに、その拡散を抑制するシリサイド層が、結晶成長に重要な影響を及ぼすことを示唆している。
山本 博之; 山口 憲司; 北條 喜一
Thin Solid Films, 461(1), p.99 - 105, 2004/08
被引用回数:10 パーセンタイル:46.84(Materials Science, Multidisciplinary)ベータ鉄シリサイド薄膜作製においては、Fe, Si原子の相互拡散及び反応が最も基礎的なプロセスとなる。このため、配向性の高い薄膜や、良好な物性を得るためにはナノ領域における構造,組成の観測と同時にその制御が不可欠である。本発表においては、種々の方法,作製条件により得られた鉄シリサイド薄膜に関して透過型電子顕微鏡,放射光を用いたX線光電子分光法を応用し、その形成過程を明らかにした成果を報告する。併せて、Si基板表面にイオンを照射し意図的に欠陥を生成させることによってより低温で膜生成を促進させた結果、Fe原子がSi基板中に拡散し、シリサイド化する様子を温度変化させながらその場観察した結果など、従来まで演者らの研究により得られた成果についても総括的に発表する。なお、本発表はIUMRS国際会議におけるシリサイド系半導体のセッションでの招待講演である。
志村 憲一郎; 勝俣 敏伸*; 山口 憲司; 山本 博之; 北條 喜一
Thin Solid Films, 461(1), p.22 - 27, 2004/08
被引用回数:8 パーセンタイル:41.01(Materials Science, Multidisciplinary)-FeSiは、自然界に多く存在している鉄とシリコンから構成されており、また製造段階で毒性の強い薬品を多用しないため、次世代の環境半導体として注目されている。また、その特性は、現在の光通信技術を進歩させるに十分なものとされる。しかしながら、現在その合成法は未発達な状態にある。Si基板上に-FeSiをエピタキシャル成長させるうえで、その作製法は数多くあるが、われわれはイオンビームスパッタ蒸着(IBSD)法を採用している。実用的な-FeSiのデバイス化で必要なことは、単結晶薄膜を得ることである。鉄蒸着前のSi表面の状態は、薄膜の結晶性に大きく影響を及ぼすと考えられる。本研究では、ネオンイオンによるスパッタ・エッチング及び照射後、1073K, 1時間程度の熱処理を行いFeの蒸着を行った。最適なスパッタ・エッチングの条件を模索するため、ネオンイオンエネルギーを14keV、フルエンスを0.3103010ions/mと変化させ薄膜作製を行った。作製された薄膜は、X線回折法を用いその結晶性を評価し、スパッタ・エッチング条件の変化が薄膜にいかに影響を及ぼすかを調べた。その結果、エネルギー1keV, フルエンス310ions/m程度が最適であると結論づけられた。
五十嵐 慎一*; 勝俣 敏伸*; 原口 雅晴*; 齊藤 健*; 山口 憲司; 山本 博之; 北條 喜一
Vacuum, 74(3-4), p.619 - 624, 2004/06
被引用回数:6 パーセンタイル:27.83(Materials Science, Multidisciplinary)イオンビームスパッタ蒸着法を用いて「環境に優しい」半導体であり、受発光素子などへの応用も期待される-FeSi薄膜作製を行った。従来までの著者らの検討により、イオン照射によるSi基板処理と照射後の加熱によって良好な-FeSi薄膜の得られることが明らかとなっている。本研究においては基板処理条件の最適化を目的とし、照射イオン(Ne)のエネルギーを110keVまで変化させることにより、それぞれの条件において得られた基板を用いて成膜を行った際の薄膜の結晶性及びその配向性について透過型電子顕微鏡,X線回折により検討を行った。この結果から、3keVで照射を行った場合がそれ以上のエネルギーに比べて良好な膜質となることを明らかにした。これは3keV程度の照射によって生成する基板表面の欠陥生成量とその深さが成膜のためのFe-Siの相互拡散に最も適していたためと考えることができる。
原口 雅晴*; 山本 博之; 山口 憲司; 仲野谷 孝充; 斉藤 健; 笹瀬 雅人*; 北條 喜一
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B, 206, p.313 - 316, 2003/05
被引用回数:17 パーセンタイル:72.74(Instruments & Instrumentation)環境半導体,-FeSiは環境に配慮した元素から構成され、受発光素子・熱電変換素子などへの応用が期待される材料である。本研究ではSi基板の表面処理法が成膜した-FeSiの結晶性に及ぼす影響を検討することを目的として、高温加熱処理,スパッタ処理,化学処理の3種の異なる方法で処理した基板を用いてそれぞれFeをスパッタ蒸着し成膜を試みた。得られたX線回折スペクトルから、高温加熱処理した基板を用いた場合は成膜温度973Kにおいて相ではあるものの種々の結晶方位が混在する膜となった。一方スパッタ処理,化学処理による基板の場合ではいずれも比較的良好な結晶性を持つ-FeSi膜が得られた。透過型電子顕微鏡による薄膜断面の像からもそれぞれの基板処理法によって基板表面の構造とともに膜の結晶性が変化することを示すとともに、簡易な処理法であるスパッタ処理においても結晶性が良好であることを明らかにすることができた。なおホール効果測定によるキャリア密度との関係についても併せて議論を行った。
山口 憲司; 山本 博之; 北條 喜一; 鵜殿 治彦*
JAERI-Conf 2002-014, 60 Pages, 2003/01
シリサイド系化合物は、環境に負荷を与えない新しい半導体材料として内外で注目を集めている。本研究会は、平成14年8月5,6日の両日、原研東海研究所の先端基礎研究交流棟大会議室において開催された。1件の招待講演を皮切りに、10件の口頭発表と20件のポスターによる発表が行われ、2日間延べ約140名に及ぶ出席者により活発な討論を行いつつ盛況のうちに全日程を終了した。本編はその報告書である。
部家 彰*; 原口 雅晴*; 山本 博之; 齊藤 健*; 山口 憲司; 北條 喜一
石川県工業試験場平成14年度研究報告, (52), p.9 - 12, 2003/00
環境半導体である鉄シリサイド(-FeSi)をイオンビームスパッタ蒸着(IBSD)法により生成した。ターゲットにFeSiを用い、FeSi蒸着膜厚を変化させたときのFeSi膜の結晶構造及びSi, Fe濃度分布の変化から、成長機構を検討した。その結果、FeSi蒸着量によりFeSi膜の結晶構造が異なり、それはFeに対するSiの供給量に依存すること、また、FeSiターゲットを用いることにより、膜厚100nm程度の(100)優先配向性の-FeSi膜が生成できることを示した。
斉藤 健; 山本 博之; 笹瀬 雅人*; 仲野谷 孝充; 山口 憲司; 原口 雅晴*; 北條 喜一
Thin Solid Films, 415(1-2), p.138 - 142, 2002/08
被引用回数:20 パーセンタイル:67.09(Materials Science, Multidisciplinary)イオンビームスパッタ蒸着法を用いて「環境半導体」-FeSi薄膜をSi(100)基板上に作製した。この過程において、生成したFeSi薄膜がSiや他の化合物半導体に比べ大気中においても極めて安定で、強い耐酸化性を有していることを見いだした。この原因を明らかにするために、当研究グループにおいて開発した放射光-光電子分光法による非破壊深さ分析法を用い、薄膜の表面化学状態及び組成について検討した。この結果、FeSi薄膜(厚さ100nm)表面に0.7nm程度と考えられる極めて薄いSiO層が生成していることを明らかにした。このSiO層はFeSi上に均一に成長しており、3ヶ月間大気中に放置した後においてもほとんど変化が見られない。熱化学的評価からFeSi自体は大気中で室温においても酸化が進むと考えられる。このため生成したFeSi薄膜が安定であることは最表面の均一なSiO層が耐酸化性に寄与していると考えられる。
斉藤 健; 山本 博之; 朝岡 秀人; 原口 雅晴*; 今村 元泰*; 松林 信行*; 田中 智章*; 島田 広道*; 北條 喜一
Analytical Sciences (CD-ROM), 17(Suppl.), p.1073 - 1076, 2002/03
放射光を利用したX線光電子分光法(SR-XPS)を用い、-FeSi生成過程におけるSi,Feの深さ方向組成分布の解析を試みた。Si(111)基板表面に室温で100Å Feを蒸着し、723Kでアニールを行うことにより、-FeSi薄膜の作成を試みた。励起X線エネルギー200~1000eVの範囲でFe/Si比の励起X線エネルギー依存性を解析した。IMFP値を用いたFe,Siの深さ方向分布シミュレーションの結果と実験により得られたFe/Si比とを比較した結果、Fe蒸着後のアニールにより、Siが表面のFe相中に次第に拡散することが明らかとなった。Fe 2p XPSスペクトル,価電子帯光電子スペクトルそれぞれを測定した結果、723Kのアニールでは-FeSiの生成は起こらず、相のみの生成が確認された。973Kでアニールを行った場合には-FeSiの生成が確認され-FeSi生成には、より高温でのアニールが必要であることが明らかになった。
仲野谷 孝充; 笹瀬 雅人*; 山本 博之; 斉藤 健; 北條 喜一
真空, 45(1), p.26 - 31, 2002/01
イオンビームスパッタリング法を用いて、次世代化合物半導体として期待の高い-FeSiのエピタキシャル成長薄膜の作製を試みた。最適な作製条件を決定するため、Fe蒸着中のSi基板の温度及び、蒸着するFeの量を変化させて実験を行った。形成されたシリサイド薄膜の結晶性と表面の形状はそれぞれ、X線回折法と走査型電子顕微鏡にて評価した。結果、Fe蒸着量33mn,Si基板温度700で-FeSiのエピタキシャル性の良好な薄膜作製に成功した。一方、700以上では高温相である-FeSiが形成され、温度の上昇に伴い増加した。さらに基板温度を固定して蒸着量を変化させた実験から、相の生成は基板温度だけでなく、Feの蒸着量にも大きく依存することを明らかにした。